禁断 -alchemy-
2004年 07月 06日
うわあっともうダメな感じ。
どんな理由でもいい。呆れ果てた苦笑すら、きっと。
席を立ち、呑気にぶらりと出かける素振り。
内心はただガキみたいに、切羽つまってやがる。
つまりだな、その。
ったく、何やってんだ、俺。いい年こいて。
だけど足は存外真剣な早さで。
胸には可愛い愛娘、アリシアの写真が丁寧に仕舞ってあるのだけれど。
なあ、ロイ。
俺さ。
ちょっと離れて、少し会わずに、だけど話したい事は山ほどで。
たわいもないネタばかりが、増えていく。
不在を抱えている時間が積もるほど、どんどんおかしくなっていくのな、俺。
軍の専用回線は全くホットライン。熱〜い気持ちを速攻繋いでくれる頼もしいヤツ。
握るプラスチックの質感は、押し付けた耳には硬すぎる。
コール音が鳴っている間の、やたらにいらいらするのはどうしてなんだろうな。
早く出ろよと言いかけた時に、一瞬の間。
人の気配。
ああ、お前さん。
「……またか」
「俺だぜ。悪いか」
鈎のようにその心に引っ掛かれよ、電話。
今日は遅いじゃないか、なんて言われてみろ。俺ぁ、きっと朝イチで電話するぜ、多分。
だけど相手は無下にも冷たくてな。
話す事なんて、そんなにありゃしない。
ネタは、そうだ、うちの可愛いアリシアちゃんの事。
子供をダシにとは、随分な心がけ。
だけど、ヤツも俺も楽しいんだ。
本当に言いたい事お互い隠したまま、互いの声を聞き取ってる。
どんな顔してるか、想像してる。
会いたいなんて、言えねえだろうが。
今更な。
たまに、私が俺がと人称を変えるのが嬉しくて。
お前さんと呼んでふざけて。
ああ、どうしてお前遠いんだろう。
俺ぁなあ。
なんか手足もげかけてる。炭酸抜けた間抜けなコーラみたいにな。
電話口にすら、キスしたい気分さ。
by mer_ciel
| 2004-07-06 12:35
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